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「人生塞翁が馬、苦あれば楽あり、不運は幸運の前触れ」

2014.09.08

DSC00936シンガーソングライター・小椋佳さんの「生前葬コンサート」が、9月12日から4日間、東京・渋谷のNHKホールで行われます。

生前葬コンサートという、馴染みのない言葉。
古希を過ぎた小椋さん。70歳を過ぎ、気力、体力ともに減退を感じ、今回の生前葬コンサートを最後に、大掛かりな歌手活動などにピリオドを打つとのこと。このことを初めて私が知ったのは、昨年12月に富山市・婦中ふれあい館で行われた小椋さんのコンサートの時。
期待にたがわない素晴らしいコンサートでしたが、終了間際にこの告白を聞き、正直驚きました。

「音楽活動の場合、定年はない。だから自分でけりをつけなければならないと思った」という小椋さん。初めてコンサートを行なった想い出の場所、NHKホールをあえて最後の会場に選んだという。毎年約50曲の歌づくりを続け、40年間で2,000曲以上の作品を残したといいます。その中から、選りすぐりの1日25曲を、まったく異なるメニューで4日間、全100曲を歌い上げます。

 「生前葬という葬式をやるからには、遺言状というものを書いておくのもいい」と、遺書「小椋佳 生前葬コンサート」(朝日新聞出版)が出版されました。小椋さんの心情が、赤裸々に綴られているこの本。
この中で、次男の方が中学2年生の14歳の時、原因不明の若年性脳梗塞となり、左脳全体が破壊され、言語も記憶も運動力も失い、全身不随、植物状態で入院され、つらい日々を送られたことを初めて知りました。

小椋佳さんといえば、東大法学部を卒業し、日本勧業銀行(現在のみずほ銀行)に入行、本店部長まで歴任した超エリート。並行して、シンガーソングライターとしても、若くして数々のミリオンセラー生み出した才能豊かな人。順風満帆の人生、幸福そのものの人と、勝手に考えていました。

 治療の方法が見出せず、なんの回復の兆しも見出せない時、息子さんの枕元で「あなたが美しいのは」を口ずさんだところ、なんと息子さんが正確にこの歌を歌い出したといいます。その場面を、「私は驚いた。感動した。うれし涙が溢れてきた」と感無量の思いで書いておられます。不思議なことに、この日を境に遅々としながらも、医師も驚くほど、息子さんは言語も手足の運動能力も回復し始めました。
それでも、試行錯誤を繰り返しながら、外見的に健常者と見分けがつかなくなるまでには、ほぼ10年の年月を要したとあります。
現在、その次男の方は40歳に近づき、全国でも稀な琵琶製作者という職人技を身につけ、植物状態の時は望むべくもなかった素晴らしい、音大出の女性と結婚し、良き歩みを続けておられます。

「人生塞翁が馬、苦あれば楽あり、不運は幸運の前触れ」という小椋佳さん。人々の魂に響く曲調は、ご自身の辛い胃癌からの克服を含め、他人にはわかり得ない、多くの艱難辛苦を乗り越えた中から生まれてきたものなのでしょうか。
生前葬コンサートの成功を祈っています(O)

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