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一枚の絵

2015.08.18

(花)グロリオーサ、カーネーション、ケイトウ(葉物)ヒペリカム、丸葉ルスカス(枝)ドラゴン柳

(花)グロリオーサ、カーネーション、ケイトウ(葉物)ヒペリカム、丸葉ルスカス(枝)ドラゴン柳

 久し振りに美術館巡りをしました。
 世界一かわいい美術館、県水墨美術館、県立近代美術館の3つの美術館です。

  水橋駅近くにある世界一かわいい美術館は、運悪く「お盆3日間は休館」とあり、正面ドア前でガックリ。

  県水墨美術館は、「超絶技巧!明治工芸の粋」が企画展。
 最終日の、しかも午後に出掛けたため、廊下まで溢れ出る長蛇の列。約30分間の入場制限を経て、なんとか会場へ。
 京都・清水三年坂美術館の所蔵品であり、以前、NHKのEテレ「日曜美術館」でも紹介された、選りすぐりの逸品ぞろい。安藤緑山の木彫・牙彫はじめ、明治工芸の粋を、この目でしっかり堪能できました。
 ただ、欲を言えば、自分のペースでゆっくり鑑賞したかったです。

  県立近代美術館。
 この美術館は、抽象画やポスターなどの企画展示が多いため、日頃あまり足を運ばない美術館。
 今回、企画展「戦後70年 無言館展 画布に遺した青春」が開催中のため、約1年ぶりに訪ねました。会場に入って、ビックリ。入場者の多いこと。年配者もさることながら、中学生や高校生、家族連れが目立ちます。夏休みの自由研究のためでしょうか、熱心にメモを取る姿もあちこちで見受けられました。

  長野県上田市にあるという戦没画学生慰霊美術館、「無言館」。
 この美術館には、第二次世界大戦中、志半ばで戦場に散った画学生たちの遺した日本画や洋画などが、全国各地から収集され、展示されているそうです。戦後70年の節目を迎え、「無言館」に所蔵されている作品の中から、今回、画学生たちの遺作、遺品約150点が紹介されています。

  会場全体を通して、トーンが暗く、陰影の濃い作品が目立ちます。
 戦時中という時代背景が、そのまま絵に反映したためでしょうか。それとも、絵筆を銃にかえなければならなかった学徒たちの無念さ、心の葛藤が、画風に色濃く表現されたためでしょうか。

  そのような中で、心にとまった作品は、小野春男さんの屏風絵「茄子」。
 小野春男さんは、京都市出身の日本画家で、昭和17年に出征し、昭和18年に戦死。享年26歳。日本画家・小野竹喬(ちっきょう)の長男とあり、驚きました。小野竹喬さんは、言わずと知れた日本画壇の重鎮。大好きな画家の一人です。戦死されたご長男がおられたことを、初めて知りました。

  「茄子」を見せていただく限り、小野春男さんは非凡な才能の持ち主だったようです。素人であるこの身に、画の価値などわかるはずもありませんが、もし存命だったならば、父・竹喬さんのように大いに活躍されたかもしれません。有為な人材を失った気がします。

  学生時代、「きけ わだつみのこえ ― 日本戦没学生の手記」(岩波文庫)、和田稔著「わだつみのこえ消えることなく」(角川文庫)など、学徒出陣で出征した学生たちが遺していった、数々の遺稿集を読んだ時期がありました。
 声にならない声に、心響くものがありました。

 戦後70年という節目の年。
 小野春男さんの一枚の絵に魅せられ、志半ばで戦禍に散った多くの学徒たちに、想いを馳せた盆休みでした。(O)

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