初女さんのおむすび
2016.03.22
青森県弘前市で「森のイスキア」を主宰していた、佐藤初女(はつめ)さんが2月1日に亡くなられました。94歳だったそうです。
本の中でしか知らず、一度も初女さんにお会いすることが出来ませんでしたが、不思議と親しみを覚える方でした。
かなり前から「森のイスキア」に一度は訪ねてみたいと思っていましたが、結局、願いは叶いませんでした。初女さんが握られたおむすびを食べることが出来なかったことが、心残りです。
「初女さんのおむすび」は、とても有名です。
学校や職場、家庭などで心傷ついた多くの人たちが、森のイスキアを訪れ、初女さん自ら心を込めて作る、手料理やおむすびで元気を取り戻し、帰って行ったと聞いています。自殺を思いとどまった方も、何人もおられるようです。
お金を出せば、おむすびはコンビニやスーパーなど、簡単にどこででも手に入ります。市販のおむすびででも、美味しいものがたくさんあります。
それでも、初女さんが握るおむすびは、単なるおにぎりではなかったようです。
何が違っていたのでしょうか?
もう4年前になりますが、初女さんの事務所に電話したことがありました。
初女さんに講演会の講師をお願いするためです。
「食はいのち」と語り、「食」をとても大切にする初女さん。
この方こそ、JAグループが現在取り組んでいる「みんなのよい食プロジェクト」の講師として、相応しいと思ったからです。無鉄砲極まりないのですが、講師料や様々な条件が分からないまま、「とにかく来てもらいたい」という一心で電話しました。
年配の男性が出られ、日程などお聞きしたのですが、結局、お願いしたい時期にスケジュールが詰まっていて、駄目だということが分かりました。電話から受ける感じでは、かなり前から日程が埋まっていたようでした。色々と親切に声掛けしてくださいますが、こちらのスケジュールを変更することも出来ず、残念ながら初女さんを富山県にお呼びすることは出来ませんでした。
赤ちゃんは生まれてくるとき、ほとんどの赤ちゃんは手を握り締めて、生まれてくるそうです。
「その手の中には、目には見えないが、一人ひとり違った宝物や賜物(たまもの)をしっかり握りしめている」と、ある方の本に書いてありました。
94歳の生涯を閉じられた、佐藤初女さん。
初女さんは、この世に生を享けられたとき、何を握り締めて誕生されたのでしょうか。
誰にもない良き宝物、初女さんにしか出来ない素晴らしい賜物を十二分に生かして、地上の生活を終えられた気がします。
ドキュメンタリー映画で、「地球交響曲・第二番」という映画があります。
映画監督は龍村仁さんで、チベット仏教の最高指導者であるダライ・ラマさんとともに、佐藤初女さんらが取り上げられています。全国各地で自主上映され、多くの方から共感を集めていると聞いています。
残念ながら鑑賞したいと思いつつも、今まで観る機会がありませんでした。
もう、生きた佐藤初女さんにお会いすることは出来ませんでしたが、せめて画像を通じてお会いしたいと思っています。(O)