美しい四季をうたう「はり絵」
2017.04.18
はり絵画家・内田正泰さんの展覧会に行って来ました。
以前から、内田正泰さんの作品をまとめた本は持っていましたが、本物のはり絵を観るのは、今回が初めて。
たまたま新聞で内田さんの展覧会が紹介されていて、会場の富山市民プラザと大和富山店に行って来ました。やはり熱心なファンが多いせいか、両会場とも多くの人で賑わっていました。
内田さんの作品は、かなり前から知っていました。
恥ずかしながら、はり絵だと知ったのは、ごく最近のことです。
到底、はり絵とは思えない大胆な構図と明るく美しい色彩。作品を間近に鑑賞させていただき、改めて「はり絵」であることを、再確認した次第です。
内田さんのはり絵は、とても不思議です。
初めて観るはり絵なのに、以前からよく知っていたような錯覚に陥ります。一度も行ったことも、見たこともない場所や風景にもかかわらず、なぜかなつかしい郷愁を覚えます。
幼い頃の四季折々の景色と、どこかダブります。そして、日本人なら誰もが抱いている、心の中の風景がみごとに表現されています。
内田さんの「はり絵」は、一般的な「ちぎり絵」のように和紙を使いません。
和紙だと破った輪郭が繊維でぼやけてしまい、色面と色面の形があいまいになりがちです。そのため、あえて和紙ではなく洋紙を使い、はさみやカッターもできるだけ使用しないようにし、あくまで「破る、ちぎる」にこだわっているそうです。
驚くのは、きちんとした下絵を描かないこと。
ほとんど即興で破った紙を張り込んでいくそうです。下絵の線に沿って張り込むやり方では、絵が生き生きとした生命のあるものにならないからだそうです。
今年、内田正泰さんは94歳。
ご高齢にもかかわらず、制作意欲はまったく衰えていません。いまだに心のふるさとを呼びさまし、ほっと安らぎを与えてくれる作品を作り続ける、その創作意欲。
そして、衰えることがない内田さんのみずみずしい感性。
当然ながら内田さんのような鋭い感性や豊かな感受性は、持ち合わせていません。
しかしながら、美しいものをそのまま美しいと感じられる心、きれいなものをきれいと受け止められる感性は、失いたくありません。
若い時は若いなりに、歳をとれば歳相応に、感性は変わっていくものと思います。
自らの年輪を増すとともに、歳にふさわしい豊かな感性を身につけたいものです。
そして、なることならば、目に見えないものだけではなく、目に見えない本質までも感じ取れる感性を身につけたいものです。(O)