「なんくるないさー」
2015.02.09
「なんくるないさー」という言葉があります。
沖縄の方言で、「なんとかなるよ」という意味だそうです。
単に「なんとかなるさ」という楽観的な展望を表すのではなく、むしろ「挫(くじ)けずに正しい道を歩む努力をすれば、いつか良い日が来るよ」という意味に近いそうです。
この言葉が持つ、独特な柔らかな響きと、ほのぼのとした味わいが好きで、時々「なんくるないさー」と呟(つぶや)いています。
家人の関係で、沖縄に時々出掛けています。
何度足を運んでも、沖縄は好きな島であり、行くたびに新たな発見と不思議な魅力を感じます。那覇空港に着き、沖縄の独特なイントネーションと温かな人柄に触れると、ただそれだけでホッとさせられます。
温暖な気候が関係しているのかもしれませんが、沖縄の人には良い意味で「なんくるないさー」的な考え方が、根底に流れている気がします。
「なんくるないさー」という言葉は、初めから消極的に「なんとかなるさー」と捨て鉢になるのではなく、色々と創意工夫を重ね、精一杯努力したうえで、最後の最後に前向きに委ねる思いで、「なんくるないさー」と発するようです。昔から長い間、侵略や戦争に苦しんできた、沖縄の先人の知恵から滲み出てきた言葉なのかもしれません。
「ケ・セラ・セラ」、そして「レット・イット・ビー」という言葉があります。
「ケ・セラ・セラ」はスペイン語で、「なるようになるさ」という意味。
「ケ・セラ・セラ」は、アメリカのドリス・デイが映画の主題歌として歌い、ヒットした有名な曲です。日本でも、ペギー葉山さんがカバーし、私にとっては懐かしい曲になっています。
「レット・イット・ビー」は、もちろん言わずと知れたビートルズの名曲。
中学2年生の時に大ヒットし、ビートルズの中で最も好きな曲の1つです。この「レット・イット・ビー」という言葉も、「あるがままに」「なすがままに」という意味だったと思います。
先日、射水市新湊博物館に行って来ました。
「石黒宗麿 人間国宝60周年記念」展を観るためです。
石黒宗麿(むねまろ)さんは、射水市出身の陶芸家。昭和30年に初めて重要無形文化財保持者いわゆる人間国宝に、「鉄釉陶器」で認定されます。道の駅の横にある射水市新湊博物館。いつも全くといってよい程、入館者がおらず、ゆっくり展示物が観ることができ、気に入っています。陶器は、残念ながら門外漢ですが、素人なりに観ることが好きで、時々足を運んでいます。
その石黒宗麿さんの作品の賛に、「必然看取」という言葉がありました。「ものごとには必然があって、そのまま従って生きていけば良い」という意味だそうです。「必然看取」は、もちろん「なんくるないさー」と意味する所は異なります。でも、何か手の届かない、大きな流れに身を委ねるという点では、共通するものがあるような気がしました。
「なんくるないさー」。
初めから何もしないのではなく、自分なりにあれこれ懸命に努力をしてみる。そのうえで、後の結果は自然の流れに我が身を委ねる。「人事を尽くして、天命を待つ」ではありませんが、ちょっとした心のゆとり、もう少し心の余裕が必要なのかもしれません。
心は、快晴。肩の力を抜いて、「なんくるないさー」。(O)