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春を告げる、ふきのとうの苦み

2015.02.23

お雛さま、第2弾です。(枝)桃、(花)菜の花、コクンー、リューココリーネ、バラ、スプレーバラ

お雛さま、第2弾です。(枝)桃、(花)菜の花、コクンー、リューココリーネ、バラ、スプレーバラ

 昨日(22日)、春一番が吹きました。
 いよいよ、春到来です。
 三寒四温といわれる、この時期。少しずつ、春の芽吹きが感じられます。

  3月6日は、啓蟄(けいちつ)。
 二十四節季の一つである啓蟄。
 「啓は『ひらく』、蟄(ちつ)は『土中で冬ごもりしている虫』の意味で、大地が暖まり冬眠していた虫が、春の訪れを感じ、穴から出てくる頃」を表すそうです。

 2月半ば、雪融けした土手沿いの斜面で、レジ袋を持ったご夫妻を見ました。時折、腰をかがめておられたので、ふきのとうを採っておられたのでしょう。やや薄日が差しているとはいえ、まだ風が冷たく、肌寒い日にもかかわらず……。

 でも、ちょっと分かる気がします。

 寒空の冬景色から少しずつ解放され、春の訪れを心待ちにする気持ち。そして、春を告げる使者ともいえるふきのとうを摘み、旬の恵みを味わおうという思いが。

 独特の苦みと香りがあるふきのとう。
 特に「ふきのとう味噌」を、炊き立ての熱いご飯にのせて食べると最高です。「春が来たなー」という実感が湧きます。沢山のふきのとうを摘んでも、調理するとほんの僅かの量に。でも、小さい頃から馴れ親しんでいるせいか、おふくろが作ってくれるふきのとう味噌を食べないと、春が来た気がしません。

 先日、書店で三浦綾子さんの新刊「丘の上の邂逅」(小学館)を見つけました。
 三浦綾子さんが召天されたのは、平成11年10月。77歳でした。早いもので、もう16年の歳月が流れます。ご本人が亡くなられたので、もう新著は発行されないものだと、勝手に思っていました。そのため、店頭で三浦綾子さんの新著を見て、びっくり。
 どうも生前に執筆され、未発表のものが、編集者たちの努力により、少しずつ世に出て来ているようです。

  旭川に生まれ、旭川に育ち、ほぼ全生涯を旭川で過ごされた三浦綾子さん。
 旭川の冬は厳しく、土地の人は、その骨までしみとおる寒さを「凍(しば)れる」と表現するそうです。上川盆地が影響するためか、旭川は夏の最高気温が35℃近くまで上がり、冬は時にはマイナス25℃以下まで冷え込み、北海道の中でも寒暖の差が激しい所の一つといわれているそうです。

 その旭川について、三浦綾子さんは、このように語っています。長文ですが、引用させていただきます。

  「もしこの旭川が、きびしく長い冬を持たなかったら、それは何とつまらぬところであろう。長い冬の中で、人々は耐えるということを学ぶ。自然の厳しさに耐えるということである。それはまた、人生の厳しさに耐えるということでもある。しかも、只(ただ)漠然と耐えているのではない。そこには、春を「待つ」という積極的な姿勢がある。希望がある。待って待って、待ちくたびれるほど待った果てに春がある。春を迎える喜びは、北国の者でなければわからない。むさぼるように春を楽しむ。道端に咲くタンポポにも、庭にふくらむ木の芽にも、大いなる驚きと喜びとをもって、わたしは体全体で春を感ずる。」(「丘の上の邂逅」145p~146p)

  春を迎える喜びは、確かに長く厳しい冬を体験している、北国の者にしかわからないと思います。旭川ほどでは無いにしろ、雪国に育った者として、素直に共感できます。文中にある「むさぼるように春を楽しむ」という言葉に、すべての思いが凝縮されている気がします。

 東京に、小石川後楽園という小さな庭園があります。
 先日、上京した際に、ちょっと訪ねてみました。

  水戸光圀ゆかりの東京ドームに隣接した、この庭園。水戸徳川家の江戸上屋敷につくられた、築山泉水回遊式の大名庭園です。本駒込にある六義園(りくぎえん)とともに、好きな公園です。大都会・東京の都心に、このような自然が残されていること、そして、都会の喧騒から一歩足を踏み込むだけで、四季折々の草花や野鳥を十分楽しめることに、正直驚かされます。

 「梅まつり」開催中の小石川後楽園。
 温かな陽春を体いっぱいに浴びながら、庭内をゆっくり散策しました。苑内には、数多くの梅が植えられ、ちょうど白梅、紅梅などが咲き始めた頃で、福寿草や水仙も、あちこちで咲いてしました。残念ながら、まだ富山では味わえない春の息吹きを、ひとあし早く満喫させてもらいました。

 
 春は、人生の節目の時期でもあります。
 卒業、入学、退職、就職、人事異動など、人の歩みの多くの分岐点が、この春に集中します。
 明けない夜は無いといいますが、懸命に道を求める人は、かならず光に出会うと思います。新しい旅立ちを迎える人々に、幸多かれと祈ります。(O)

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