静かに老いてゆく愛犬との日々
2015.04.06
家路に着き、玄関ドアを開け、真っ先にすることがあります。
愛犬が、寝息をたてているか、確認することです。
わが家の愛犬トーマスは、17歳。
犬の年齢早見表によると、人間に換算して、もう84歳過ぎ。
もうすっかり、お爺さんです。毎日、眠り続けています。信じられないほど、ひたすら眠っています。
帰宅して、寝ているトーマスのお腹が、静かに動いているのを確認すると、正直ホッとします。
当地に転居する際、子供たちと犬を飼う約束をしました。
子供たちが、ペットショップへ足蹴(あしげ)く通い、選んだのが今のトーマス。柴犬なのに、なぜか名前はカタカナの「トーマス」。当時人気のあった、幼児番組「機関車トーマス」から命名したようです。
飼い始めた頃は、小さくて両手に乗るほどの大きさ。子犬の頃は、見ているだけで、しぐさが可愛らしく、子供たちのおもちゃ代わりに。
子供たちとの初めの約束、「犬の世話は、ちゃんとみるから……」を守ったのは、ほんの2カ月間だけ。いつの間にか、子供たちは「部活がいそがしい」「塾に行かなくてはいけない」とのたまうことに。予想どおり、可愛がるのは子供たちの役割、世話はすべて父親の務めに。朝晩、2回の散歩、食事や下の世話、そして犬小屋の掃除……。結構、やることがあります。
エネルギーにあふれる成犬になってからは、生きる活力をもらった気がします。
ただ、柴犬のオスのためか、成犬になってから何回咬まれたことか。遊んでいて、甘がみかと思うと、本気でガブリ。なにを考えているものやら。「誰が一番世話しているか、わかっているのか」と、本気で怒りたくなります。
トーマスは、散歩が大好き。
夏場、何を勘違いしたのか、空が白み始める午前4時前から、「散歩に行こう」と大きな声で吠えることも。ご近所に迷惑が掛かるので、結局、眠い目をこすりながら、散歩に行く羽目に。
でも、トーマスとの散歩のおかげで、毎日規則正しい生活が送れ、かなりの距離を歩いた時期もありましたので、健康維持には大変役立った気がします。
今のトーマスはといえば、目や耳はおろか臭覚もおぼつかない状態。最近は、とみに足腰が弱り、前脚で何とか立ち上がっています。それでも、相変わらず朝晩、1日2回の散歩は続けています。散歩といっても、すぐ近くの町内を回ってくるだけ。後ろ脚を、ややひきずるように歩き、ステップしているような有様。老犬がゆっくり歩く傍らで、介護しながら付き添っています。
つらいのは、家の前の外階段。あれほど元気に駆け下り、駆け上がっていた、わずか3段の階段。今は、かなり時間を掛けて上り下りするか、時々抱えてやっています。
排泄は、全くといっていいほど、失敗しない犬でしたが、この頃粗相をするようになりました。こちらは、怒る気もないのに、後片付けをしていると、申し訳なさそうにしています。
食欲旺盛で、食いしん坊でしたが、今は食も細くなりつつあります。
17年間のトーマスとの歩み。
静かに老いてゆく愛犬との暮らしは、ふと自らの老いと重ね合わせられ、胸にしみるものがあります。
どれだけ疲れて家に帰っても、人であれ、犬であれ、猫であれ、自分の帰りを心待ちにしている人、動物がいることは嬉しいことです。
トーマスは、17年間、ひたすら私の帰りを待ち続けてくれています。
こんな日が、一日でも長く続くことを日々願っています。(O)