25年後の自分
2015.06.23
初蝉(はつせみ)。
今年初めて、セミの鳴き声を聞きました。
どこからともなく聞こえてくる、セミの鳴き声。
まだ弱々しく、心なしか遠慮がちで、人生の哀愁さえ感じます。
初夏の風物詩ですが、「もうそんな時期か」と、改めて時の流れの早さに驚かされます。
高齢にもかかわらず、元気に頑張っている人がいます。
昭和6年生まれ、御年(おんとし)84歳。
農協会館駐車場係のAさんのことです。
駐車場係は、長い間、ベテランのBさんが担当していましたが、事情によりしばらく休養することになり、ピンチヒッターとしてAさんが代理を務めることに。
派遣先の警備会社からAさんの紹介があったとき、年齢を聞いてびっくり。なんと84歳とのこと。まさか80代の方が交代要員とは……。何しろ、母親と同い年なのですから。
会ってもいないのに、年齢だけで判断してはいけないと思いますが、60代のBさんの代わりが、80代のおじいちゃんとは……。
農協会館には、100台収容可能な立体駐車場のほかに、約70台駐車可能な平場駐車場があります。
この平場駐車場の管理が、駐車係の主な仕事です。
会館の規模の割には、駐車場のスペースが十分とは言えません。物理的に限られた中で、うまくやり繰りするのが、駐車係の腕の見せどころ。当日の会議室の利用状況や会議内容などを考慮しながら、朝から駐車台数を調整します。
午前中からフリーで駐車場へ入れると、午後に予定されている重要な会議の出席者の車が、まったく入れないことにもなりかねません。
簡単なようで意外と難しく、時にはお客様から大きな罵声や叱責をいただくこともあります。
Bさんの職場復帰の見通しが立たないため、とりあえずAさんに来てもらうことに。
Aさんは慣れないながらも、汗をかきながら誠実に頑張っています。
ベテランのBさんの場合、お客様の顔もかなり分かり、阿吽(あうん)の呼吸でうまく対応していましたが、新人のAさんにそこまで求めるのは、初めから酷な話。毎日のように、小さなトラブルが発生していて、こちらも雨の中、駐車場で走り回りながら応援することも……。
改めて、84歳。
59歳の私にとっては、ちょうど25年後にあたります。
生きているかわかりませんが、25年後の自分。想像もつきません。
憎まれっ子世にはばかるではありませんが、意外としぶくと生きているかもしれません。
84歳で、少なくとも人中(ひとなか)で働いていることは到底考えられません。もちろん、誰も雇ってくれるはずもありませんし、働きたくもありません。
ただ、仮に採用してもらえるなら、バイトやパートで十分ですから、一定の時期までは働かせてもらいたいと思います。収入というより、社会とのかかわりや生活のリズムを大切にしたいからです。
第2の人生、第3の人生。
これからが、人生の本番と考えています。ある意味で、大変楽しみにしています。
作家・五木寛之さんは、50歳から75歳までのこの時期を、「林住期」と語っています。
私のとっての「林住期」。読みたい本が、本棚に山積みのまま待っていてくれています。晴耕雨読ではありませんが、自分なりに出来る野菜づくりを、そして読書に思いっきり時間を割きたいと思います。
学生時代、北海道や四国、九州など、独りでリュックを担ぎながら旅行しましたが、あの無計画な旅の中で得た、数多くの出会いは得難いものがあります。健康が、そして状況が許せば、少し足を伸ばしてみたいと考えています。
目の前に広がる誰も歩いていない、水平な白い砂浜。
歩くのは、他でもない自分だけです。
ふと振り返った時、自分なりに確かな足跡を残せたらと思います。(O)