晩秋の朝顔
2015.11.25
朝顔につるべ取られてもらい水
いうまでもなく江戸時代の有名な女性俳人、加賀千代女の代表的な俳句です。
「朝、井戸に水をくみに来てみると、朝顔のつるがつるべに巻きついていて水がくめない。切ってしまうのもかわいそうなので、近所に水をもらいに行くことにした」という様子をよんだものです。
季語は朝顔で、初秋とあります。
11月下旬になったというのに、我が家の朝顔はまだ咲いています。
軒下に2基のプランターを置き、4種類の朝顔の苗を植えたのは5月下旬。
長ハシゴを使って、プランターから2階のベランダ下まで、横2メートル、高さ5メートルの緑のネットを張りました。朝顔は成長とともに、面白いようにつるを自由に這わせ、7、8月頃にはネット一面にきれいな花を咲かせてくれました。
残念ながら2本は、根腐れを起こしたらしく、お盆過ぎに枯れてしまいましたが、残り2本はベランダ近くで、いまだに毎朝5~6輪の花を咲かせてくれます。
もうこの時期のことです。
当然、ほとんどのつるは枯れていますが、例年にない温暖な気候が影響したのでしょうか?太いつると上の方のつるは、今も緑色をとどめ、可憐な花を咲かせています。
夏場に咲く朝顔からは、生き生きとした生命力、活力に満ちた華やかさを感じます。
晩秋に咲く朝顔からは、哀愁やわびしさとともに、寒さの中にも鮮やかな花を咲かせる何か凛とした強さが感じられます。
町内でも、雪吊りや雪囲いなど、ボツボツ冬支度が始まっています。
今頃、夏の風物詩である朝顔のネットを張っている家は、どこにもありません。
近所の手前、本来ならば緑のネットを外し片付けるべきなのですが、朝顔の花を見ていると不憫に感じられ、そのような思いにはなれません。
加賀千代女の俳句にあるような、優しく高尚な思いはありませんが、もうしばらく朝顔の自由にさせてやろうと思います。(O)