内側に沁みいる喜び
2017.01.10
明けまして、おめでとうございます。
健やかに、新しい年をお迎えのことと思います。今年も、よろしくお願いします。
昨年を振り返りますと、何より耐震改修工事が無事終了することが出来、ホッとしています。足掛け3年、24カ月と長期にわたる改修工事でしたが、大きな事故やトラブルが発生することもなく、計画どおり終えることが出来ました。
多くの方から「正面玄関が明るく、綺麗になった」「開放的で、気持ちがいい」などと、嬉しいお褒めの言葉をいただき、こちらも嬉しくなります。
改めて、多くの方々に感謝申しあげます。
個人的なことで恐縮ですが、年間100冊の本を読むことを目標としています。
昨年はというと、残念ながら68冊止まりでした。一昨年の85冊に比べると、大幅なダウンです。読書ノートをみると、夏場の6月から8月に掛けて、明らかにペースが落ちています。言い訳がましいのですが、この時期、全くといっていいほど、土、日曜日の休みがありませんでした。水田の草刈り、そして生産組合長として、イノシシ対策や山道刈り、秋道刈りなどに追われ、多忙を極めた時期であったことは、事実です。
夏場のペースダウンが、最後まで影響したようです。
週2冊で、目標の数字に達成するのですが、現実は甘くないようです。
心に留まった本としては、徳永進著「野の花 あったか話」(岩波書店)、同「野の花 ホスピスだより」(新潮文庫)、細谷亮太・大下大圓共著「『いのち』の重み」(佼成出版社)などがあげられます。
昨年、山形を旅行した関係で、作家・藤沢周平さんの本を6冊読ませてもらいました。
いつの間にか「周平モード」に引き込まれるとともに、一人娘である遠藤展子さんの著書「父・藤沢周平との暮らし」(新潮文庫)も繙き、子供の目から見た父・藤沢周平さんの生き様にも触れることが出来ました。
併せて、米沢藩に興味が湧き、破綻寸前の藩財政を救ったことで有名な上杉鷹山を扱った「漆の実のみのる国」(文春文庫)や、延沢恒夫著「米沢の殉教者とその余影」なども読みました。
特に「米沢の殉教者とその余影」は、350年以上も前に、上杉家の城下町である米沢の地で、50数名のキリシタンが信仰ゆえに処刑場で殉教した本で、長崎や雲仙、京都などではなく、東北の地に殉教者がいたことに驚くとともに、幼子から老人まで喜んで死を受け容れる姿に、言葉に表せない感動を受けました。
美術館や博物館については、昨年、10数回訪ねることが出来ました。
例年より少ない回数となりましたが、好きな向井潤吉アトリエ館に2回、昨年11月に新しくオープンした「すみだ北斎美術館」にも行くことが出来ました。ただ、「北斎美術館」については、開館間際に訪ねたせいか、浮世絵ブームの影響なのか、ものすごい人でゆっくり鑑賞することが出来ず、とても残念でした。
昨年、一番印象に残った展示会は、石川県立美術館で開催された「日本伝統工芸展」です。毎年5月に高岡市美術館で開かれる「日本伝統工芸展富山展」が好きで、欠かさず足を運んでいますが、石川県の伝統工芸展は規模も、展示内容も数段上でした。
NHK・Eテレ「日曜美術館」で紹介されていた、神奈川県・本間昇氏の日本工芸新人賞を受けた「神代桂菱紋重糸目筋箱」や、沖縄県・城間栄順氏の日本工芸賞を受賞した琉球紅型染着物「彩海」など、約350点にも及ぶ、日本伝統工芸の粋を集めた作品を間近に鑑賞することが出来、まさに至福の時となりました。
もう新しい年がスタートして、10日余りが過ぎました。
先日、集落の初寄会(はつよりあい)があり、忙しかった生産組合長も無事新しい方へ引き継ぐことが出来ました。今年は、少しは時間の余裕が出来るかナーと思っています。
正月早々、柴田よしき著「さまよえる古道具屋の物語」(新潮社)、白洲正子・牧山桂子共著「白洲正子のおしゃれ 心を磨く88の言葉」(新潮社)、重松清著「その日のまえに」(文春文庫)を読み終えました。 重松清さんの「その日のまえに」については、既に読まれた方もおられると思いますが、「その日」、つまり「死」を扱った本で、最後の三連作を読む頃にはもう涙、涙で、グジュグジュになりました。実にいい本でした。
重松清さんが、どこかで書いていましたが、
「外に向かって弾けるような喜びではなく、内側に静かに沁みていく喜び」
そのような喜びをいっぱい心に蓄える、そんな年にしたいものです。(O)