東京から博多まで、各駅停車で
2015.11.10
先日、福島県・会津地方を旅行してきました。
バスツアーで1泊2日。鶴ヶ城、会津鉄道、五色沼、あだたら山ロープウェイなどの旅。安達太良山の紅葉は終わっていましたが、鶴ヶ城、五色沼などはちょうど見ごろで、好天候にも恵まれ、楽しい旅となりました。
あわただしい日々を送っていると、時々無性に旅に出たくなることがあります。
学生時代、よく一人旅に出掛けました。
今となっては、もう死語となってしまった「カニ族」。
昭和40年代から50年代にかけて、蟹のように横長の大型リュックを背負って旅行する若者達を称した言葉です。
小生も、大学1年と2年の夏休みに北海道、大学3年の春休みに四国、大学4年の春休みに九州を、「カニ族」スタイルで、一人であちこち旅行しました。当時「ワイド周遊」という、かなり割安な乗車券があり、目的地までの往復切符と目的周辺の広範囲にわたり自由に乗り降りできる急行・自由席がセットされており、貧乏学生の身にとってはとても重宝しました。
この券を利用して、東京から九州・博多まで各駅で行ったことがあります。
本来ならば、東海道本線を利用するのが一般的ですが、なぜか新宿駅を23時55分に出発し、中央線経由で大垣駅に向かいました。深夜にもかかわらず、登山客などで車内が混雑していたことを覚えています。
各駅停車を何回も乗り継いで、夕方やっと着いたのが広島駅。
車窓から流れていく風景をボーっとながめ、乗り降りする人々の会話に何気なく耳を傾けながら、方言やイントネーションがこんなにも変わっていくものかと驚かされました。
博多に着いたのは、翌朝の10時頃。
正直疲れましたが、金はなくとも、時間だけたっぷりある学生。そんな学生時代だからこそできる、楽しい旅でした。
北海道では、よく駅構内で寝たものです。
宿泊費をすこしでも浮かすためで、当時の駅は深夜もけっこう開放されていました。
特に北海道の中央部にある旭川駅は、多くの若者がゴロ寝していました。夏とはいえ、北海道です。朝方は、ヒンヤリと寒い日もありました。
見知らぬ者同士、近くで寝ているといつの間にか親しくなり、穴場の観光地や食事のおいしい民宿など、何かと情報交換したものです。
スケジュールなし、下調べもなし、泊まる宿の予約もなし。
ない、ないづくしの、全く行きあたりばったりの旅です。
あえて計画を建てない旅というものも、なかなか乙なものです。
今、出版されているかわかりませんが、「ブルーガイド・ブックス」という本が、唯一の頼みでした。この本で紹介されている観光地を、気分と天候次第で自由に歩きまわり、宿も当日の午後、行った観光地の近くで公衆電話を掛けてさがすという無計画さぶりでした。
昭和50年代のこと。インターネットも、携帯電話もない時代です。
考えようによっては、不便なようで何もなかったのが、逆に良かった気もいます。
思い出の地をあげるとすれば、北海道では阿寒国立公園にあるオンネトー湖、四国では四万十川支流にある滑床(なめとこ)渓谷、九州では夕焼けに染まる「いろは島」でしょうか。
どの地も、今も心に印象深く残っています。
一人旅をすることは、もう出来ないかもしれません。
体力的にも、健康の面からも、いろいろと不都合が出始めているからです。
でも、一人旅の醍醐味が忘れられない時があります。
あの行きあたりばったりの無計画さ、無鉄砲さが、小生の性格にぴったり合っている気がするからです。(O)